2007年より毎年6月, 欧米の図書館・美術館の日本研究司書19人が天理に集まり、天理大学附属天理図書館において、「天理古典籍ワークショップ」の研修をうけている。これは海外において,日本の古典籍の組織化・管理ができる人材を育成することを目的として、広く点在する古典籍資料の目録情報流通を整備し、その利用・活用を助け研究を促進させようという意図のもとに企画された試みである。
必要とされる専門知識は,広範囲にわたり,学ぶべきことは多い。こうした知識は短期間で習得できるものではなく,実際の経験によって広がりと深みをもつものに成長していくとの考えから、本ワークショップでは,3年かけて段階的に修得していくことを目指している。当該年度に習得した知識等を研修者の現場に戻って実際の業務に適用し,その中での問題点等を次年度持ち寄ることにより,より実際的な知識と技量を習得・涵養できるであろうと考える次第である。
この6月に第二年度のワークショップを成功裡に終えたところであるが、今回特に再確認できたのはこのステップアップ方式はこのワークショップにとって確実に有効な方法であったということであろう。
すなわち一同この恵まれたワークショップの研修方式・環境に慣れ、研修自体にますます専念することができるようになり、古典籍の知識・経験が蓄積されつつあることに自信を得る一方、講師をはじめとして天理の方々各位の真摯な指導・対応に刺激されて、研修生自身の積極的な姿勢、向学心、協力意識が生まれてきたことである。
こうした意識・意欲の高まりが一つの機運となって、研修期間中に2回ほど自主的ブレイン・ストーミングがもたれ、その場において、OJAMASG (Overseas Japanese Antiquarian Materials Study Group 海外日本古典籍研究会)が結成されるに至ったことを心より嬉しく思うものである。この研究会は古典籍の研鑽を目的とする一方で、協力体制の強化・調整、ネットワーク化を期するものであり、また今回直接ワークショップに参加出来なかった関連の担当者に対しても呼びかけ、支援・ネットワークを広げてゆくことを意図している。
研究会の活動は、British Library の協力・賛同を得てここにに新たに作られたホームページ上で公開していく計画であり、その共同プロジェクトの嚆矢として、メンバー所属機関所蔵の和古書コレクションのダイレクトリーの作成、及び古典籍目録作成への便宜のための用語用例集の作成の二つを始めた。
最後になったが、この研究会結成の契機となった天理古典籍ワークショップ・シンポジウム開催にあたってその企画・主管に多大のご尽力戴いた共催の天理大学、天理附属図書館をはじめとして、
主旨にご賛同頂き助成戴いた国際交流基金、Great Britain Sasakawa Foundation、
後援者として国文学研究史料館、国立情報学研究所、
European Association of Japanese Resource Specialists (EAJRS)、
North American Coordinating Council on Japanese Library Resources (NCC)、またその数々の協賛者各位にあらためて深く感謝を申し上げるとともに、今後のご協力、ご支援を願って止まないものである。
Izumi Tytler : Chair, Tenri Workshop Committee